温泉の効能について調べてみた
今回は弊社のある社員が「温泉」について話しました。
最近温泉によく行きます。
- 特に用意するものはない
- お金もかからない
- 健康にも良さそう
などの理由で通っているのですが、正直何故温泉が健康に良いのかわかりません。
というわけで、この機会に色々調べてみました。
01 温泉の定義
そもそも温泉とはなんでしょうか。
昭和23年にできた温泉法の第二条によると、
この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
「温泉法」(e-Gov 法令検索) (https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000125)
というふうに定義されています。引用中の別表はこちらです。
つまり、
- 地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス
- 温度が25℃以上のもの
- 定められた物質が含まれているもの
これらが、冷たくても水蒸気でもガスでも温泉法上は「温泉」となります。
02 療養泉
温泉の中でも、水蒸気やその他のガスを除いたものを「鉱泉」と言います。
鉱泉のうち「特に治療の目的に供し得るもの」を、環境省によって定められた鉱泉分析法指針では「療養泉」とすると定義されていて、私たちが普段温泉と呼んでいるのがこの「療養泉」になります。
含有物質によって泉質が変わり、10種類に分類されるそうです。
こちらの表を見る限りでは、温度が25℃以上の水であれば大体が療養泉になってしまうので、定義がなかなか広いように思いました。
療養泉の定義
- 水蒸気その他のガスを除く温泉
- 温度が25℃以上
- 定められた物質が含まれている
- 規定量以上含まれているか
療養泉の効能
療養泉には様々な効能があると言われており、含有成分や入浴による温熱作用、さらに周辺の環境や気候などが総合的に働くことで、心理的・生体的反応を引き起こし、効用を発揮するそうです。
一定期間の温泉療養で良化が期待できる症状を「適応症」と言い、適応症には泉質を関係なく共通する「一般的適応症」と泉質によって定められた「泉質別適応症」があります。
特定の病気に効果があるというよりは、
一般的適応症
- 自律神経不安定症
- 冷え性
- 喘息
- 筋肉や関節の痛み・こわばり
- 胃腸機能の低下
- 糖尿病
- 疲労回復
これらの症状や苦痛を軽減し、健康を回復・増進させる効能があると考えられています。
一方で、入浴、または飲用であっても行ってはいけない症状を禁忌症と言い、発熱や病気などで体力が消耗している時に温泉に入るのは良くないとされています。
一般的禁忌症
- 病気の活動期(特に熱のあるとき)
- 活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合
- 少し動くと息苦しくなるような重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気
- 消化管出血、目に見える出血があるとき
- 慢性の病気の急性増悪期
03 泉質
温泉は含まれている化学成分の種類とその含有量によって泉質が決められ、下の10種類に分類されます。
- 単純温泉
- 塩化物泉
- 炭酸水素塩泉
- 硫酸塩泉
- 二酸化炭素泉
- 含鉄泉
- 酸性泉
- 含よう素泉
- 硫黄泉
- 放射能泉
単純温泉
溶存物質が1000mg/kgに満たないもので、泉温が25℃以上のものを単純温泉と言います。
日本の温泉の約32%が単純温泉です。
溶存物質が単純だからこんな名前をしているわけではありません。
他の泉質と比べると化学成分の含有量が少なく、マイルドな刺激が特徴です。
- 泉質別適応症(浴用)
- 自律神経不安定症
- 不眠症
- うつ状態
塩化物泉
溶存物質が1000mg/kg以上で泉温が25℃以上のものを塩化物泉と呼びます。
日本の温泉の約27%が塩化物泉です。
肌に塩分が付着し汗の蒸発を防ぐため、湯冷めしにくいのが特徴です。さらに殺菌効果と痛みを和らげる鎮静効果を併せ持つとも言われています。
- 泉質別適応症(浴用)
- 切り傷
- 末梢循環障害
- 冷え性、うつ状態
- 皮膚乾燥症
- 泉質別適応症(飲用)
- 萎縮性胃炎
- 便秘
炭酸水素塩泉
日本の温泉の約10%が炭酸水素塩泉です。
皮膚の角質を軟化したり、毛穴の汚れを取る効果があります。
よく耳にする「美人の湯」「美肌の湯」などはこれに該当します。
- 泉質別適応症(浴用)
- 切り傷
- 末梢循環障害
- 冷え性
- 皮膚乾燥症
- 泉質別適応症(飲用)
- 胃十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 耐糖能異常(糖尿病)
- 高尿酸血症(痛風)
硫酸塩泉
日本の温泉の約11%が硫酸塩泉です。
新陳代謝を活性化し、肌の素性を促す作用があります。
「傷の湯」「痛風の湯」などと呼ばれたりします。
- 泉質別適応症(浴用)
- 切り傷
- 末梢循環障害
- 冷え性
- うつ状態
- 皮膚乾燥症
- 泉質別適応症(飲用)
- 胆道系機能障害
- 高コレステロール血症
- 便秘
二酸化炭素泉
二酸化炭素を1000mg/kg以上含むのが二酸化炭素泉です。
日本の温泉の0.6%がこれに当たります。兵庫県の有馬温泉や大分県の長湯温泉などにあるそうです。
入浴すると身体に小さな気泡が付着します。
血管を拡張し、血流を改善、血圧を下げる作用があるため「心臓の湯」とも言われています。
- 泉質別適応症(浴用)
- 切り傷
- 末梢循環障害
- 冷え性
- 自律神経不安定症
- 泉質別適応症(飲用)
- 胃腸機能低下
含鉄泉
鉄(Ⅱ)イオン、鉄(Ⅲ)イオンを合計で20mg/kg以上含む温泉を含鉄泉と言います。
日本の温泉の約1.4%が含鉄泉です。
含鉄泉は鉄分を含むため、空気に触れ酸化すると金色に変色します。
鉄分を含むため貧血や冷え性に大変効果があり浴用での適応症に月経障害がありましたが、2014年に改定された鉱泉分析法指針で科学的根拠を重視し、浴用での適応症は無くなっています。
- 泉質別適応症(飲用)
- 鉄欠乏性貧血
酸性泉
水素イオンを1mg/kg以上含むのが酸性泉です。
日本の温泉の約1.1%。
殺菌力が強く、皮膚病などに効果があり「皮膚の湯」と呼ばれています。
一方で皮膚や粘膜の過敏な人は禁忌症に気をつけなければいけません。
- 泉質別適応症(浴用)
- アトピー性皮膚
- 炎尋常性乾癬
- 表皮化膿症
- 耐糖能異常(糖尿病)
含よう素泉
よう化物イオンを10mg/kg以上含む温泉を含よう素泉と言います。
2014年の鉱泉分析法改定で新たに追加された泉質です。東京だと板橋区にあるみたいです。
浴用での適応症は認められておらず、飲用することで内臓の働きを活性化させ、コレステロールを下げたり動脈硬化の予防に効果があると言われています。
- 泉質別適応症(飲用)
- 高コレステロール血症
硫黄泉
総硫黄を2mg/kg以上含んでいる温泉を硫黄泉と言います。卵の腐ったような匂いが特徴。
日本の温泉の8%が硫黄泉です。
殺菌効果が高いため、ニキビや皮膚病に効果があります。酸性泉と同じく禁忌症には注意が必要です。
日光湯元温泉(栃木)や小涌谷温泉(神奈川)などが硫黄泉に当たります。
- 泉質別適応症(浴用)
- アトピー性皮膚炎、
- 尋常性乾癬
- 慢性湿疹
- 表皮化膿症
- 泉質別適応症(飲用)
- 耐糖能異常(糖尿病)
- 高コレステロール血症
放射能泉
1kg当たりラドンを30×10-10Ci(8.25 マッヘ単位)以上含む温泉のことを指します。
日本の温泉の3%が放射能泉です。色や匂いは特にありません。
放射能という言葉から、怖いイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、むしろ温泉に含まれる微量の放射能は細胞を活性化させる効果があるそうで「万病の湯」と呼ばれています。
- 泉質別適応症(浴用)
- 高尿酸血症(痛風)
- 関節リウマチ
- 強直性脊椎炎
04 掛け流しとは
温泉に行くと「掛け流し」という言葉をよく目にするかなと思います。
掛け流しとは、浴槽に常時新湯を注入して溢流(オーバーフロー)させ、溢流した湯を再び浴槽に戻さず再利用しない方法のことです。
掛け流し以外の温泉は、溢れたお湯を濾過して再利用するなどされています。
さらに「掛け流し」の中にも下のような種類があります。
- 温泉掛け流し
- 注入する新湯(温泉)への加水および加温は可能
- 源泉掛け流し
- 注入する新湯(温泉)への成分変化が少ない範囲で加水や加温が可能
- 源泉100%掛け流し
- 注入する新湯(温泉)への加水や加温ができない
源泉100%の方がなんとなくお得感があるように思われるかもしれませんが、そのままだと熱すぎたり成分が強すぎたりして調節が必要な場合もあるので、一概に100%が良いかというとそうでもありません。
これまで泉質の違いなど気にすることなく温泉に浸かっていたので、色々と種類があることに驚きました。今度は効能などを意識して温泉に浸かってみようと思います。