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2024/04/26

CG と VFX で映像を創る:技術、コスト、そして映像の基礎

CG と VFX で映像を創る:技術、コスト、そして映像の基礎アイキャッチ

目次

スライムに砂鉄を混ぜて強力な磁石で引っ張りたいです。

今回は弊社の中野が「CG と VFX で映像を創る」をテーマに話しました。


前職で CG 制作の仕事をしていました。
日常でよく目にする CG や VFX ですが、実際にはどのように制作されているのか、簡単にご紹介します。

01 CG と VFX について

まず CG と VFX とは。

CG

コンピューターグラフィックスの略
コンピューターを使って描かれた図形や画像のことです。静止画、映像、ゲームなど、様々なところで使用されています。
総称として使われる場合もあり、基本的には VFX も CG に入ります。

VFX

ビジュアルエフェクトの略。日本語で言うと視覚効果。
映像業界においての VFX は、実写を組み合わせた CG(実写を使わない CG はフル CG)のことを一般的に指し、ゲーム業界ではエフェクトのことを言います。

CG 制作工程

CG の制作は、工場のように専門の分野に分かれており、下の図のような流れ作業で行われます。
私はコンポジットを担当していました。

CGの制作工程

それぞれ少し補足しますと、

  • モデリング
    • 3Dモデルを作成し、キャラクターやオブジェクトの形状をデジタル空間に再現する
  • リギング
    • モデルに骨格を組み込み、動きや表情のアニメーションを可能にする
  • アニメーション
    • リグされたモデルに動きを与える
  • エフェクト
    • 視覚効果を加えて、ビジュアル的なインパクトを高める、爆発や破壊、流体などの製作
  • レンダリング
    • 全てのビジュアル要素を統合し、画像や動画を生成する
  • コンポジット
    • レンダリングされた複数の画像やエレメントを合成し、最終的な画像や映像を作り上げる

こうして作られたものが編集に送られ、編集とグレーディング(映像の階調と色調を整える画像加工処理)が終わると納品されます。

基本的に、CG 制作会社が行うのは図の部分のみです。撮影や編集などは別の制作会社が行います。

02 CGを作るにはお金がかかる

個人でやる分には、フリーのソフトを使うなどすれば、お金をかけずに作ることもできますが、商業でやろうと思うと大変です。

  • ソフトウェア
  • ハードウェア
  • レンダーサーバー

など、それぞれ結構お金がかかります。
どれぐらいの値段なのか少し見てみましょう。

※金額などは2024年4月末時点のものです。正確な情報はサイトでご確認ください。

ソフトウェア

3DCG

  • Maya:286,000円 / 1 年間
    • キャラクターアニメーションに強い
  • 3ds Max:286,000円 / 1 年間
    • 建築ビジュアライゼーションとゲーム開発に強い
  • Cinema 4d:196,000円 / 1 年間
    • モーショングラフィックスに強い
  • Houdini:$6,995 / 1 年間
    • エフェクトで強い
  • Blender:無料

Mayaと 3ds Max は AUTODESK というアメリカの会社が出してる総合的なソフトウェアです。
商業では Maya が多く使われている印象

見てもらうとわかるように、Houdini は飛び抜けて高いです。
それぞれ一長一短あるかとは思いますが、個人でお金をかけずにやりたい場合は Blender を推奨します。

texture

Photoshop は広く知られた画像編集ソフトウェアですが、substance 3D collection も同じく Adobe が開発しています。
Substance はノードベースのテクスチャ制作に特化しており、プログラミングの手法で素材を作成することが特徴です。この技術は特にゲーム業界で流行しています。

composit

  • Foundry NukeX:$4,449 / 1 年間
    • 高度なコンポジット作業に特化
  • After Effects:6,048円 / 1 ヶ月
    • モーショングラフィックスとビジュアルエフェクトの作成に強い

私が使っていたのは Foundry NukeX(Nuek) です。映画制作において Nuke は非常に人気があり、ハリウッド映画や日本映画にも広く使用されています。

ハードウェア

CG制作では、高性能なハードウェアが重要で、これにはソフトウェア同様大きな費用がかかります。
特に、GPUと大容量のストレージは、レンダリング時間を短縮するために必須と言えます。

映画の場合、1 秒 24 フレームという高いフレームレートが一般的で、数秒の映像を生成するのに数十時間かかることも珍しくありません。個人のPCだけでは、このような重い作業を処理するのは困難です。そのため、専用のレンダリングサーバーが必要になります。

さらに、HD(1920x1080)から4K解像度への移行により、より大きなストレージが必要になりました。
したがって、CG制作は高額な投資を必要とするため、そのコストは非常に高くなります。

ゲームの場合は、事前にレンダリングされた素材を使用するので、映画ほどのハードウェア要求はありません。

03 映像について

ここからはもう少し踏み込んだ話をしていきたいと思います。

フレームレート

先ほども名前が出てきましたが、1秒間に連続で表示する画像の数のことです。
下のように、映画やテレビではフォーマットが決まっています。

映画

テレビ

ウェブ

フレームレート

24 / 23.976

30 / 29.976

特に決まりはない

映画は 24 フレーム / 秒(fps)で撮影され、このフレームレートが映画特有の質感と視聴体験を作り上げています。
一方、テレビ番組やビデオは通常 30 fps 以上で撮影され、より滑らかな映像を実現します。

1 秒間に 6 フレームの差は、映像の見え方や動きの感じ方に大きな違いをもたらし、それぞれのメディアの視聴体験に影響を与えます。

RGBA

RGBは「Red, Green, Blue」の略で、これら 3 つの色を組み合わせて様々な色を表現します。
各色の値は 0 から 255 までです。例えば、RGB(255, 255, 255)は白を意味します。

RGBA は、RGB に「Alpha」チャンネルを加えたもので、透明度を表します
Alpha 値も 0 から 255 の範囲で、0 は完全に透明を意味します。したがって、RGBA(255, 255, 255, 0)は透明な白です。

ソフトウェアによって色のデータ表現には違いがあり、例えば Adobe では 8bit、16bit、32bit から選択可能で、

  • 8bit の場合、2 の 8 乗 = 256 段階
  • 16bit の場合、2 の 16 乗 = 65536 段階

となります。

これに対して、Nuke は標準で 32bit を使用し、色の値を 0.0 から 1.0 の浮動小数点数(Float)で扱います。

ビット深度が高いほど色の階調が滑らかになりますが、データ量が増え、処理が重くなるデメリットもあります。
光を綺麗に描写したい場合などは、階調が高い方が良いです。

素材

CG 制作で使用される素材について。一般的に広く使われるファイル形式が以下の 3 つ。

  • jpeg
    • ウェブでの使用に適した圧縮画像形式
  • png
    • 透明度を保持できる非圧縮画像形式で、品質の劣化が少ない
  • mp4
    • ビデオファイルの圧縮形式で、デジタルプラットフォーム全般に広く使われている

jpeg や mp4 は圧縮がかかっているため、オリジナルのものに比べ劣化していますが、容量を抑えられるので画質とサイズのバランスがよく使いやすいです。ウェブ制作でも使われているかと思います。

続いて、映画やテレビ制作で使用されるファイル形式です。

  • exr
    • 32bit の色深度と複数の画像情報を含むマルチチャンネルをサポートしており、詳細なビジュアルエフェクトが求められる場面で使用される
  • DPX
    • 主に映画業界で使用される、高い色深度を持つ画像形式で、色再現性が重要な納品用途に適している
  • TIFF
    • 高解像度の画像保存に適したフォーマットで、テレビ制作での利用が多い
  • MOV
    • Apple ProRes などの高品質コーデックを含む動画形式、

MOV を除く上記の形式(exr, dpx, tiff)は通常、連番形式で使用されることが多いです。連番形式とは、一連の静止画を順番に表示して動画のように見せる手法のこと。

各フレームが、個別の画像ファイルとして保存され、これらを高速で連続表示することで動画としての再生を実現します。特に映画制作においては、この方法で高品質なビジュアルエフェクトや編集が行われます。

輝度の保存

映画では暗部や明るい部分の情報量がとても重要です。これには、logカーブとダイナミックレンジが関与しています。

Log カーブとダイナミックレンジ

logとは対数のことを指しlogカーブとは対数的なトーンカーブのことです。このカーブは、光の量が多い(明るい)部分と少ない(暗い)部分の両方を効果的に捉え、記録することができます。
対してダイナミックレンジとは、映像や写真においてカメラが捉えることのできる最も暗い部分と最も明るい部分の間の明るさの範囲を指します。この範囲が広いほど、多くの詳細とトーンを映像に記録することが可能です。

映画でlog素材が使用される理由は暗部や明るい箇所のディティールを破壊せずに効率的にクオリティの高い映像素材が保存できるためです。

最近では、低価格で高品質なイメージセンサーが普及していますが、プロ用と一般消費者向けのものでは、技術や目的に差があります。プロ用カメラは編集時により多くの映像情報を保持し、黒つぶれや白飛びが少なくなるよう設計されています。

合成の作業

最後に、映像制作で重要な合成技術をいくつか紹介します。

  • バレ消し
    • 意図せず映り込んだ物体やエレメントを映像から消去する技術。映画撮影で映り込んでしまったマイク、カメラの反射、ワイヤーなどを消去し、映像を自然に見せるためにペイント修正やマスクが使われます。
  • マスク
    • 特定の部分だけを隠したり、露出させたりする技術で、エフェクトや修正を局所的に適用することができます。例えば、映像の一部にブラーをかけたり、特定のオブジェクトの色を変えたりする際に使用されます。
  • トラッキング
    • 映像内のオブジェクトや特定のポイントを追跡し、その動きに合わせてテキストやグラフィックスを動かす技術です。動く車に広告を表示させ続ける、俳優の目に特殊効果を適用するなど、動く映像にエフェクトや修正を自然に見せるために使います。

バレ消し、マスク、トラッキングなどの合成技術は映像制作において不可欠ですが、それだけではなく制作の現場ではコストの問題も大きな課題となっています。

最近では、実際にロケを行うのはコストが高いため、グリーンスクリーンを利用して背景を後から合成する方法が一般的です。この技術により、様々なシーンを創出できるようになり、現実的ではない場所や高コストのロケーションでもリアルな映像を作り出すことが可能になりました。

これらの技術は、映像のリアルさと視覚的魅力を高めるために必要ですが、一方でとても地味で大変な作業でもあります。

04 まとめ

ここまで CG と VFX の制作プロセスの複雑さや、それに伴う時間とコストについて見てきました。
これらの技術は、映像を魅力的にするために欠かせませんが、その効果を最大限に発揮するには専門的なスキルと知識が求められます。

今回の話が、CG 制作のプロセスをより深く理解する一助となったなら幸いです。

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