ブレイキンの文化と歴史
目次
日清から出たオーベルジーヌのカレーメシがとても美味しかったので、カレーメシでこんなに美味しいんなら本物のオーベルジーヌ食べたらどうなっちゃうんだ??と思って出前したのですが、個人的にはカレーメシの方が好きでした。
今回は弊社の森崎が「ブレイキン」について話しました。
最近見るのにハマっている「ブレイキン」について紹介したいと思います。
01 ブレイキンとは
ブレイキンとは、音楽に乗せて身体のあらゆる部分を使って、回ったり、跳ねたりとアクロバティックな動きを取り入れたダンスです。
1970年代にニューヨークのサウスブロンクス地区のアフリカ系アメリカ人やラテンアメリカ人の若者たちによって発展したストリートダンスのスタイルだと言われています(諸説あります)。
当時のサウスブロンクスには貧困層の人々が数多く暮らしており、様々な犯罪が横行していました。生き延びるためには自分もギャングになるしかない、荒れた地域だったそうです。そしてギャング間の抗争によって多くの若者が命を落としていました。
そんな状況を嘆いたアフリカ・バンバータは、サウスブロンクスの秩序を保つために自らギャング団を設立し、治安向上を目指します。
彼は抗争をまとめるために、ヒップホップの四大要素となったラップ・DJ・ブレイキン・グラフィティなどのストリートバトルで競い合うように取り組みを行いました。
ヒップホップの四大要素
- DJ : 音楽
- B-Boying : ダンス
- Graffity : グラフィックアート
- MC : ラップ
ブレイキンという名前から、「壊す」という意味の「Break」と誤解されることがありますが、実際は曲と曲の合間、「間奏」のことを指すそうです(諸説あります)。
誕生の経緯と発案者
1970年代のニューヨークでは、ブロックパーティーという道端で音楽をかけて踊ったりする祭りが日常的に行われていました。
ブロックパーティーの最中、 ヒップホップ界のゴッドファーザーとも呼ばれるジャマイカ出身の DJ クール・ハークは、DJ 中に歌のパートよりも間奏の時に踊りが激しくなったり盛り上がっていることに気付きます。
そこで彼は、それまで一つのターンテーブルで曲をかけていたのを、二台のターンテーブルを使って曲の間奏だけを次々と流し、ダンスする時間を引き伸ばしました。そうして生まれたのがブレイキンです。
そのように間奏ばかりを流す音楽を Break Beats、Break Beats で踊るダンスはブレイキン、踊る人を Break Boy(B-Boy)、または Break Girl(B-Girl)と言います。
ブレイクダンスという名前で知られていますが、正式名称はブレイキン(Breakin’, Breaking)で、ブレイクダンスはメディアが誤って広めた呼び方だそうです。
HipHop 黎明期の三大 DJ
- クールハーク → ブレイクビーツを発明
- グランドマスター・フラッシュ → スクラッチを始めとするテクニックの普及
- アフリカ・バンバータ→ HipHop の名付け親
02 ダンススタイル
ブレイキンには起承転結の流れがあり、次のような順番でダンスが展開されていきます。
(起)トップロック
フロア(床)へ入る前に立って踊るダンスです。
ほとんどのラウンドでトップロックからムーブ(演技)が始まり、別のスタイルへと派生していきます。
ブレイキンでは、一つのラウンドの中で 2 〜 3 ムーブを交互に踊っていくのですが、曲がかかり始めたらまずどちらが先に踊るのかといった駆け引きがあり、最初にトップロックを始めた方から踊りに入っていくという流れになります。
それぞれの動きには意味や解釈を保有しているものもあり、組み合わせることで表現やアピールとなるそうです。
(承)フットワーク
トップロックから派生するのがフットワーク。
しゃがんだ状態で地面に手をつき、素早く動く足さばきやステップなどのことを指します。
フットワークにはいくつかのパターンがあり、ステップのパターンの組み合わせや変形を加えることでオリジナリティを出します。
(転)パワームーブ
ブレイキンを代表するアクロバティックな動きが特徴的なのがパワームーブ。
名前の通りパワー溢れる派手なダンスです。
背中や肩で回るウィンドミルや頭で回るヘッドスピン、体操の鞍馬の技にもあるトーマスフレアなどが有名で、身体の様々な部分で回転する動きを指します。
(結)フリーズ
トップロック、フットワーク、パワームーブなどの一連の流れから、音に合わせて身体や動きを固めて止めることをフリーズと言います。
これがダンスのキメの部分です。ダンスの最後というだけあってここが一番盛り上がるところでしょうか。
この動きには、バランス・パワー・柔軟性が必要で、止まる際の身体の形や止まり方で個性を表すそうです。
椅子に座っているように見える「チェア・フリーズ」が有名で、低い位置や高い位置で止まるなど、色々な種類があります。
技の種類もたくさんあって、それぞれ見ているだけでも面白いです。
参考:ブレイクダンスの技一覧!全58種類を難易度別に解説!
03 バトル文化
ブレイキンは、ギャングの抗争を喧嘩や暴力ではなくダンスで決着をつけようと若者に働きかけたところから始まりました。
そのため他のストリートダンスとは違い、ショーとして魅せるよりも、バトルで戦うという文化が形成されていきます。先ほど紹介したダンススタイルにもその文化が色濃く表れています。
- トップロックで相手を挑発
- フットワークはオリジナリティに長けた足技で相手を圧倒
- パワームーブは相手よりも早いスピンで会場を盛り上げる
- フリーズで逆立ちや片手だけで体を支えてキメる
ダンスを通して相手よりもいかにオーディエンスを沸かすことができるか、それで勝敗を決めていました。
これが現代のダンスバトルにも受け継がれています。
ダンスバトル
1ON1 やチーム戦など様々なバトル形態がありますが、基本的には一人、一対一で踊ります。チームバトルになると、ルーティンと言って全員で練習した技を出すことも。
一つのバトルで 2 〜 3 ムーブを披露するのが一般的です(3 回交互に踊る)。
DJが即興で音楽をかけて、それに合わせてダンサーも即興で踊ります。ジャッジが 3 人 or 5 人いて、それぞれが心に響いた方に手を上げて勝敗を決めます。
しかし、それだと公平性に疑問が生じることがあり、過去には疑惑付きのジャッジもあったそうです。
そのため近年では明確な採点基準が導入されるようになり、クリアなジャッジが広がっています。
世界一のダンスバトル「RedBull BC One」では下記の 8 つの採点基準が設けられています。
- 音楽性
- 基礎
- ムーブの難易度
- キャラクター / 個性
- スタイル
- 精度
- オリジナリティ / 創造性
- ラウンドの構成
即興なので、同じ型をずっと練習してそれを披露するというわけにはいきません。
ダンステクニックはもちろん、音楽の知識、会場の雰囲気などを汲み取って自分を表現しなければならず、高度なテクニックが要求されます。
個人的に一番盛り上がると思っているのは「音ハメ」と呼ばれる、ビートに合わせて動きをはめ込んでいくテクニックです。
04 スポーツへ
ブレイキンは近年とても盛り上がりを見せており、2018年に開催されたブエノスアイレスユースオリンピックで初めて競技として採用された他、2024年のパリオリンピックでも正式種目として採用が決定しています。
パリオリンピック(2024年)
パリオリンピックで採用された理由としては、
- 開催国であるフランスで人気
- オリンピックへの関心が薄い、若い世代を呼び込むため
- 世界各地でダンス大会が開催されており、数あるダンスの中でも知名度と人気がある
- 競技人口が世界で 1 億人以上(サッカー:2 億 5000 万人、野球:3500 万人)
- 2018年のブエノスアイレスユースオリンピックの正式な競技種目として採用され、観客の集客実績が評価
- 平和を目指すHIPHOP精神と、国の経済力は関係なくできる競技であることから、オリンピックの精神に沿っている
というようなことが言われています。
ブエノスアイレスユースオリンピック(2018年)
2018年のブエノスアイレスユースオリンピックでは、B-Boys(男子個人戦)、B-Girls(女子個人戦)、Breaking Mixed Team(男女 2 人のミックスチーム)の 3 種目が競われました。
この大会で、Shigekix(半井重幸)さん が B-Boys 個人で銅メダル、 Ram(河合来夢)さんが、B-Girls 個人とミックスで金メダルを獲得しています。
というように日本は強豪国の一つで、他にはアメリカ・韓国・フランス・ロシアなどが強いと言われています。
従来のオリンピック競技との大きな違い
オリンピックで競われるスポーツとなったブレイキンですが、その特性上、やはり他の競技と比べ大きな違いがいくつかあります。下にまとめてみました。
- 即興性
- ブレイキンのダンスバトルはDJが会場の雰囲気や流行の音楽を選び即興でプレイ
- 振りを用意したりすることは難しく、その場で即興で踊らなくてはいけない
- ある程度パターン(セット)は持っているらしく、即興でどのパターンを出すかを決めている?
- 技が凄くても勝てない
- スケボーやハーフパイプなどのストリート系のスポーツがオリンピック競技に次々と選出され盛り上がりを見せているが、それらは基本的に技の難易度を競っている
- ダンスバトルで最も重要視されているのが、技の難易度ではなく音楽との調和
- 元々ダンスは音楽あってのパフォーマンスなので、凄い技を繰り広げても音楽に合っていなければただの技とみなされる
- ダンス以外の知識が必要
- HipHop の歴史や、音楽に関する知識が必要
- ストリートダンスのステップには名前と意味があり、曲にマッチしない踊りをしても評価はイマイチ
- HipHop の歴史や、音楽に関する知識が必要
ただダンスが上手いだけではない。ダンスバトルという歴史がオリンピック競技にも反映されているんですね。
05 Red Bull BC One
オリンピックとは別に、1ON1 で世界最強のソロ B-Boy を決定する最もメジャーなブレイキンの世界大会が「Red Bull BC One」です。2004年から毎年、開催国を変えながら全世界を股に掛けて開催されています。
2018年には B-Girl 部門も設立され、その大会では日本人の AMI (湯浅亜実)さんが初代チャンピオンとなりました。ブエノスアイレスユースオリンピックで銅メダルを取った Shigekix さんも2020年に最年少で B-boy 部門で優勝。
日本人は 3 度(B-Boy 2回、B-Girl 1回)チャンピオンになっています。
大会の出場枠は 16人。各エリアの代表 or シード権を獲得した人が出場できます。
たった 16人しか出場できないため、「勝つ事よりも、出場するだけで名誉なこと」と世界中の B-boy から言われているそうです。
2022 年はアメリカのニューヨークで開催されました。その時の決勝大会の映像がこちら。
B-Boy : VICTOR(アメリカ)
2022 Red Bull BC One Final(vs. B-Boy Lee)
B-Girl : INDIA(オランダ)
2022 Red Bull BC One Final(vs. B-Girl Logistx)
Red Bull BC One で好成績を収めると、Red Bull BC One All Stars という特別なダンスチームのクルーに選ばれます。
All Stars のメンバーは、Redbull が公式スポンサーとして契約し、世界中のダンスイベントの参加、ダンスバトルのジャッジなどを行いブレイキンや、HipHop文化普及の為に活躍しています。
ブレイキンはとても奥の深いダンスですが、用意するものは特にないし、誰でも始められるのかなと思います。
日本人の選手も多く活躍しているので、気になった方は YouTube などで動画を見てみてください。