日焼け止めを選ぶ前に知っておきたいこと

チョコザップに行くたび蚊に刺されて気が狂いそうです。
この記事は、社内イベント「お茶会」での発表内容をもとにまとめたものです。
今回は弊社の kuriyama が「日焼け止め」について話しました。
いつからか、暑くなると蕁麻疹が出るようになりました。
特に日光に当たると症状が強くなり、皮膚が真っ赤になることも。調べてみると、これは「温熱蕁麻疹」や「日光蕁麻疹」と呼ばれるもののようです。
医師からは「日焼け止めを使えばある程度予防できる」と言われ、使い始めましたが、せっかくなら成分や仕組みについても知っておきたい。
そう思って日焼け止めについて調べてみました。
01 日焼け止めとは
日本では日焼け止めは薬機法により、「化粧品」 または 「医薬部外品」 に分類され、それぞれで広告に使える表現が異なります。
- 化粧品:日焼けを防ぐ / 日焼けによるシミ・そばかすを防ぐ
- 医薬部外品:上記に加え、日焼け・雪やけによる肌荒れや皮膚保護の表現が可能(※予防のみで治療は不可)
どちらも日焼け予防はうたえますが、医薬部外品のほうが表現できる範囲がやや広く、予防を目的としているのが特徴です。
02 日焼けの要因

日焼けは主に紫外線(UV)によって引き起こされますが、ブルーライトなどの可視光の一部も影響します。
紫外線は波長ごとに以下のように分類されます。
- UVC(100〜280nm):オゾン層によってほぼ完全に吸収され、地表には届かない
- UVB(280〜315nm):短波長側はオゾン層で吸収されるが、長波長側は地表に到達する
- UVA(315〜400nm):波長が長く、大気を通過して地表に届く
このうち、実際に人の肌に影響を与えるのはUVBの長波長帯とUVAです。
03 UVA と UVB の特徴
紫外線には、肌への影響や届く深さが異なるUVAとUVBがあります。
それぞれの特徴を押さえておくことで、日焼け止め選びがぐっとしやすくなります。
UVA(315〜400nm)
- 波長が長く、エネルギーは比較的低い
- 皮膚の真皮層まで届くため、コラーゲン(弾力)やエラスチン(張り)を生成する線維芽細胞にダメージを与える
- 長期的にダメージが蓄積し、光老化(シワ・たるみ)の原因となる
- メラニン生成を促し、肌が黒くなる(日焼け=サンタン)
- 季節による変動が小さく、一年中降り注ぐ
- 窓ガラスを通過する
- 防御力は PA(Protection Grade of UVA) 値で表記され、最高は PA++++
UVB(280〜315nm)
- 波長が短く、エネルギー量が高い
- 主に表皮に作用し、赤みや炎症(サンバーン)を引き起こす
- エネルギー量が高い分、DNA 損傷や皮膚がんのリスク要因になる
- ダメージは即時的に現れやすい
- 夏に多く、冬は減少
- 窓ガラスでほぼ遮断される
- 防御力は SPF(Sun Protection Factor)値で表記される
04 日焼け止めの成分
これまで何気なく日焼け止めを使っていましたが、調べてみると製品によって機能や仕組みがまったく違うことが分かりました。
大きく分けると、日焼け止めの働きを支えているのは次の 2 種類の成分です。
- 紫外線散乱剤
- 紫外線吸収剤
紫外線散乱剤
紫外線散乱剤は、酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物を利用して、肌の表面で紫外線を反射・散乱させます。見た目としては透明になりにくく、白っぽさやゴワつきが出やすいのが特徴です。最近では、補助成分としてシリカ(二酸化ケイ素)などが加えられることもあります。
紫外線の強いエネルギーを受けると、粒子内の電子が一時的に高いエネルギー状態(励起状態)に移り、熱としてエネルギーを放出して元に戻るという現象も起こります。つまり、散乱だけでなくエネルギーを吸収して変換する仕組みも併せ持ち、肌を保護しているのです。
使い心地の改善のため、現在は粒子をナノサイズまで微細化する加工が進んでいます。これにより白っぽさを抑えられますが、逆に皮膚への透過や長期的な安全性についてはまだ不明な点もあります。
また、スプレータイプでは粒子がエアロゾル化して呼吸器に入るリスクが指摘されており、便利さの一方で使用上の注意が必要です。
名称(表示名称) | 別名 / 略称 | 主なカバー波長 | 特徴・備考 |
---|---|---|---|
酸化チタン | Titanium Dioxide / TiO₂ | UVB~一部UVA | 散乱剤。高い散乱力。白浮き→ナノ化で透明感。安定性◎ |
酸化亜鉛 | Zinc Oxide / ZnO | UVA~UVB広範囲 | 散乱剤。低刺激・広帯域。ナノ化品で透明化 |
シリカ | Silica | 主に可視光~UVB(補助) | 散乱剤。感触改良・皮脂吸着など補助的用途 |
タルク | Talc | 可視光~UVB(補助) | 散乱剤。白浮き防止・使用感改善 |
炭酸カルシウム | Calcium Carbonate | 可視光~UVB(補助) | 散乱剤。肌にやさしいが単体では防御力低い |
酸化鉄 | Iron Oxides | 可視光~近赤外 | 散乱剤。色補正・ブルーライト対策。UVカット力は弱め |
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル | Octinoxate / Ethylhexyl Methoxycinnamate | UVB | 吸収剤。高い吸収力・使用感◎・光分解性あり |
紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、肌に届いた紫外線を化学反応によって吸収し、熱や光に変換して逃がす仕組みを持っています。先ほどの散乱剤と比べると、吸収できるエネルギー量と反応の規模が桁違いに大きいのが特徴です。
一方で、吸収剤は不安定になりやすく、安定性を保つために複数の成分を組み合わせる必要があります。処方によっては人によってアレルギー反応を起こす場合もあり、肌への相性差が出やすい点には注意が必要です。
代表的な成分には、
- メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
- ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル
- オクトクリレン
- エチルヘキシルトリアゾン
などがあります。これらは紫外線を効率よく吸収してくれますが、分子が分解されてしまうこともあるため、定期的な塗り直しが必要です。
さらに、日本では「ポジティブリスト」(ホワイトリスト形式)に掲載された成分以外は配合できないと定められています。アメリカは日本より規制が厳しく、逆に「すごい日焼け止め」として輸入される商品には、規制が緩い国で製造されたものも多いと考えられます。
最近では、MAAs(Mycosporine-like Amino Acids)と呼ばれる海洋生物由来の吸収剤が研究されており、自然由来成分として注目されていますが、コストが高いため実用化は限られています。
また環境面では、一部の吸収剤がサンゴなど海洋生物に悪影響を与えると報告され、使用禁止にしているビーチも存在しているそうです。
名称(表示名称) | 別名 / 略称 | 主なカバー波長 | 特徴・備考 |
---|---|---|---|
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル | Uvinul A Plus | UVA | 吸収剤。高安定性・UVA防御に有効 |
エチルヘキシルトリアゾン | Uvinul T 150 | UVB | 吸収剤。光安定性が非常に高い。新しめの成分 |
オクトクリレン | Octocrylene | UVB〜一部UVA | 吸収剤。補助的に使われ、他成分の安定化にも貢献 |
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン | Tinosorb S | UVA〜UVB広範囲 | 吸収剤。高性能・高安定。国内では使用制限あり |
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール | Tinosorb M | UVA〜UVB広範囲 | 吸収剤+散乱機能。水分散性あり。 |
05 季節・時間帯と紫外線

体感でも朝・昼・夕で比べると、昼が一番強いのは直感的に分かります。太陽が真上に近いときは、光が大気を通過する距離が短くなるため、地表に届く紫外線の量が増えるからです。
一方、朝や夕方は斜めから差し込むため、光が通過する大気の量が多くなり、その分紫外線は散乱されやすくなります。散乱の結果、空気中を回り込むように色々な方向から紫外線を浴びることにもなります。
波長ごとに見ると、UVBは特に散乱されやすく朝夕に減りやすいのに対して、UVAは比較的残りやすいため、一日の中でも肌への影響の仕方が異なります。
また、季節で見ると夏に最も多く、冬は少なくなりますが、UVAは季節差が小さいため、一年を通じて対策が必要です。
06 実際に使っている日焼け止め

これまで自分で選んで買ったわけではなく、家にあった日焼け止めをそのまま使ってきたので、成分や違いをよく分からないまま使っているものもありました。調べてみると、それぞれに特徴があることが分かります。
- 石澤研究所「紫外線予報 さらさらUVジェルF」
吸収剤としてメトキシケイヒ酸エチルヘキシルとUvinul A Plusを使用。基剤にはシリカが配合されています。肌感としては、自分はこのシリカ入りのタイプのほうがあまり違和感を感じない印象でした。 - ちふれ「日やけ止め ミルク UV」
吸収剤は上記と同様ですが、さらに酸化チタン・酸化亜鉛という散乱剤も併用。吸収剤と散乱剤を組み合わせたバランス型の処方です。 - 無印良品「日焼け止めジェル 50+」
吸収剤としてメトキシケイヒ酸エチルヘキシル・Uvinul T150・Uvinul A Plusを配合。散乱剤は見当たりませんでした。
日本の市販品では、特に日常使いのものは「軽さ」や「薄さ」が重視されているようです。これは化粧品と併用する前提があるため、仕上がりに透明感や使い心地の良さが求められるのだろうと思います。
もっとも、自分が試したのは日常用のものばかりなので、海やアウトドア用のレジャー向け製品ではまた違った処方になっているかもしれません。
07 まとめ
日焼けをすると交感神経が優位になり、体が緊張状態になります。ところが、回復期にすぐ副交感神経へと切り替わるわけではなく、自律神経のバランスが崩れてぐったりすることもあるそうです。激しい日焼けにはあまりメリットがないのは、この点も理由のひとつでしょう。
とはいえ、紫外線そのものがすべて悪いわけではありません。日焼け止めを使っても紫外線が完全に遮断されるわけではなく、生活に必要な分はきちんと取り込めます。 紫外線にはビタミン D の合成など体に不可欠な働きもあるため、大切なのは「浴びないこと」ではなく「浴びすぎないこと」です。
まだまだ暑い日が続きます。日焼け止めに加えて、日傘や帽子などの物理的な対策も取り入れることで、肌へのダメージを減らしながら夏を乗り切りたいと思います。

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